患者さんとの絆を求めた承継の心
2020年11月、父の築いた医院を継いだ若き院長が
大牟田の地で大きく羽を広げた。
長く大学病院に勤務し6年前に転機が訪れた
福岡県最南端の大牟田市で35年間、歯科医療を提供してきた「山下浩歯科医院」。開業者はその名が冠されている先代の院長・山下浩先生。2020年11月、息子の敏生先生にその座を譲った。それに先立ち、2019年3月には全面改装に踏み切っている。受付の床や壁は木目を生かした落ち着きのある空間に仕上げ、幅広い年齢層の患者さんに受け入れられやすいデザインにしている。一方、ユニットをアーチ状に並べるなど堅苦しくない空間も醸し出されている。
2代目となった山下敏生院長は歯科大学を卒業後、長く大学病院の口腔外科で高度歯科医療に従事してきた。転機が訪れたのは6年前、父に誘われて 非常勤で実家の医院を手伝い始めたことだったという。
「実家で働き始めたときは、継ぐという意識はありませんでしたが、次第に地域の患者さんと密接に繋がっている関係性がとても素敵に感じるようになりました」
大学病院では紹介を受けて通う患者さんがほとんどだったため、患者さんとの深い関係を築くことが難しかったという。敏生院長は患者さんとのつながりを大切にしたいと医院承継を決意した。
承継を機に診療ユニットを総入れ替え、さまざまな機器も導入
患者さんと長年にわたって強固な絆を築き上げてきた「山下浩歯科医院」は、何世代も前の機器を使い、建物が老朽化するなどしていた。改装では、すべての診療ユニットの入れ替えを決意し、イオムレガロを4台、イオムスマートを1台導入した。この秋には、カウンセリングルームの診療ユニットをイオム アクアに変更し、特別診療室に仕立て上げることが計画されている。消毒・滅菌環境もクラスBの滅菌器を導入するなど再構築し、マイクロスコープも導入した。
「消毒・滅菌については患者さんからの目も厳しくなっていましたので、使用する機器をリニューアルしました。マイクロスコープは専門治療にも使いますが、日常的に患者さんへの説明ツールとして利用しています。何をされているかわからない、と治療に不安を感じる患者さんにマイクロスコープの画像を活用し説明すると、納得していただけます」と敏生院長。昨今では、舌圧測定器と咀嚼能力検査装置による口腔機能低下症の検査にも積極的に取り組み、検査数は月平均50件を超えるという。
先代から続くジーシーへの信頼、デジタルデータの一元管理へ
「山下浩歯科医院」ではほとんどの機器を先代からジーシー製としている。今回の敏生院長が主導した全面改装でも、引き続きジーシーの製品が選ばれた。
「私が評価しているのは、フォローが手厚いということです。常に気に掛けてくれて、何かあったらすぐに駆けつけてくれるのでとても信頼しています」。そう語る敏生院長は高齢者の治療に対するデジタル技術の活用にも熱い想いを持つ。
「重症化して治療が難しい高齢者の歯科医療こそ、デジタルの活用が重要です。義歯の製作では、印象を採るリスクは高いですから、将来は口腔内スキャナを使い、CAD/CAM加工によるフルデジタル化を実現したいと考えています。そのための一歩としてデジタルデータを一括管理できるシステムも求めていて、そのこともジーシーに託しました」。患者さんの基本情報やX線画像、各種データ管理のために、カルテコンピュータシステム「Gネクサス」も導入したという。
スタッフに感謝、父の背中に感謝
「承継して驚いたことはスタッフを慕って来院する患者さんが多いことでした。この医院はスタッフに支えられているのだなと。ですから、スタッフのことはとても大切に考えています」
新たなスタートを切った敏生院長はスタッフが安心して働けるよう、労務・待遇面の改善に奔走した。社会保険 労務士に相談し、有給休暇をしっかりとれるよう労務面での改善も図った。
父から子へバトンが渡された「山下浩歯科医院」は新たなステージへ進化を遂げている。「世代交代してもスタッフが見ているのは、先代の院長である 父の背中です。父はお前の好きにやれと私のやることに口を挟みません。いまスタッフが一致団結できているのは父のこうした姿勢があるからです」と語る敏生院長の謙虚な姿が印象的だった。