約100年続く老舗の歯科医院継続の鍵は変化を恐れぬ柔軟な姿勢
「松田歯科医院」は、息子夫婦の帰郷をきっかけに2019年7月全面改装。
それぞれの得意分野を活かした幅広い診療ができるよう体制を整えた。
“親子診療”実現のためには周到な準備が必要
清流・最上川が流れる、自然豊かな街・山形県村山市に1921年開業。この地でおよそ100年もの間、人々の口腔の健康を守り続けてきたのが「松田歯科医院」である。院長の松田幸夫先生が3代目。副院長の長男・一真先生とその奥様の恵先生の3人の歯科医師が診療にあたり、院長夫人の弘代さんが事務長を務める。まさに、家族が一丸となって医院を盛り立てている。
幸夫院長は大学を卒業後、都内で7年間勤務医を務め、その後父である先代の院長のもとで“親子診療”が始まった。当時まだ若く見聞を広めたかった幸夫院長は、両親に留守を任せて、スウェーデンのイエテボリ大学まで研修に行ったこともある。そこで、歯周病について学んだことが、以後の診療のベースになっているという。
そうした“親子診療”のメリットを自ら実感している幸夫院長だが、一方で難しさも分かっていた。そこで、息子の一真副院長を「松田歯科医院」に迎えるにあたり、周到に準備をしたという。一例を挙げると、様々な事業承継セミナーの受講だ。ディーラーやメーカー、銀行や税理士会などが主催するそのセミナーでは、成功例や失敗例を交えて教えてくれ、参考になったという。幸夫院長は、セミナーで学んだことを踏まえ、“親子診療”の心得をこう語る。
「親が現状に満足しないことが大切。現在のトレンドを学んで、息子が帰ってきたら合わせられる柔軟性を身につけることが重要だと思います」
息子一家の帰郷に合わせて全面改装大胆に任せる
一真副院長が東京で勤務医として研鑽を積んだ後、2017年から「松田歯科医院」に勤務することとなった。小児歯科を専門とする奥様の恵先生とお子さんを伴っての帰郷だった。
幸夫院長は、このタイミングでかねてより考えていた全面改築を決意する。その設計や機器の選定まで、大胆に一真副院長に任せた。一真副院長は、本やインターネットなどで情報を集めるとともに、現状の診療での問題点を洗い出し、コンセプトを固めていった。
「一番は、患者さんにリラックスして診療を受けていただけるように考えました」と話す一真副院長。
その言葉どおり、診療スペースはゆったりと広めの半個室になっている。プライバシーを保ちながら、閉鎖的になりすぎない空間を創り出すために、パーテーションを採用したのが奏効している。そして、リラックスできる空間を創り出すために、強く意識したのが治療を受けているときの患者さんの視界だ。最も視界に入る前面には大きな窓を設け、外の植栽が癒やしを演出。ユニットには、フロアマウントタイプのイオムレガロを選んだ。これも、患者さんの視界にできるだけ診療機器が入らないように考慮しての選定だった。
院内レイアウトは、小さなお子さんからご高齢の方まで安心していただけるように心掛けた。トイレは、車椅子対応で男女別とし、おむつ交換台を設置。待合室には目に届きやすいところにキッズスペースを作った。また、医院の入り口から診療室まで段差をなくし、各所に手すりを設けるなど、バリアフリーも徹底されている。
三者三様の得意ジャンルを活かし診療の幅を広げる
息子夫婦の帰郷により、「松田歯科医院」には3名の歯科医師が在籍することとなった。それぞれに得意分野が違うため、現在は幅広い診療に的確に対応できているという。
一真副院長は審美領域やインプラント治療を得意とし、昨今の患者さんのニーズをしっかりカバー。恵先生は専門である小児歯科を拡充させようと奮闘中だ。そして幸夫院長は、20年以上 医院に通っていただいているご高齢の患者さんが通えなくなったときのことを考え、訪問診療も視野に入れている。
およそ100年もの間、地域の歯科医療を支えてきた「松田歯科医院」。長年続く医院でありながら、変化を恐れず、新しい風を柔軟に受け入れる。この気風こそが、継続の鍵なのかもしれない。