昨今、歯科領域において金属アレルギーに対する関心が高まってきている。従来歯科用金属として使用されている金属は通常、生体にとって無為害性、あるいはごく軽微な低為害性とされてきた。しかし、口腔内に装着されている一部の金属製補綴修復物は、唾液や食塊など苛酷な口腔内状況によって腐食性変化を生じ、その金属成分が溶出しアレルギー等の為害作用を及ぼすことがある。その対策のひとつとして筆者は、常温では金属表面に強固な不動態被膜を形成するため極めて耐食性が良く、生体適合性に優れている純チタン(T-アロイH GC社製)を使用して鋳造床を製作しているが、残留たわみが大きいことから特にクラスプの設計、製作には注意が必要である。しかし今回GC社からCo-Cr合金を上回る機械的性質を持ち、為害作用のないTi-6Al-7Nbチタン合金、商品名『T-アロイタフ』が発売された。
このT-アロイタフは、Co-Cr合金に比べて伸びがあり、純チタンに比べて硬く、強いので、床やクラスプの形態を薄く、細く、Co-Cr合金床とおおむね同様に製作することが出来る。高強度でありながら弾性が金合金タイプIVに類似していることや、比重が純チタンと同等と軽く、為害作用がないことを考慮してもクラスプ材としてパーシャルデンチャーに適している金属と思われる。そこで今回、T-アロイタフを使用した鋳造床の臨床例を紹介する。
Type IV 金合金 |
Co-Cr 合金 |
純チタン(T-アロイ) | Ti-6Al-4V 合金 |
Ti-6Al-7Nb合金 (T-アロイタフ) |
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1種(S) | 2種(M) | 3種(H) | |||||
比重 | 16.9 | 8.4 | 4.5 | 4.5 | 4.5 | 4.4 | 4.5 |
引張強度(MPa) | 800 | 720 | 380 | 600 | 640 | 970 | 950 |
耐力(MPa) | 650 | 550 | 310 | 470 | 490 | 880 | 890 |
弾性率(GPa) | 100 | 200 | 100 | 120 | 126 | 120 | 123 |
伸び(%) | 7 | 3 | 22 | 12 | 11 | - | 5 |
硬さ(Hv) | 260 | 360 | 150 | 190 | 220 | 340 | 320 |
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