水族館で人気No.1の魚と言えば、ジンベエザメ。かれらは身体にある水玉と格子柄の模様が特徴的で、とても愛らしい癒し系のサメのひとつ。大きいものだと18m以上にも成長する世界最大の魚類で、英語ではホエールシャーク(クジラのようなサメ)とも呼ばれている。
国内でジンベエザメを飼育している水族館は現時点で5館(沖縄美ちゅら海うみ水族館、海遊館、のとじま水族館、いおワールドかごしま水族館、八景島シーパラダイス)あり、サメの中でもホホジロザメに次いで、私たちによく知られているサメであろう。
しかしながら、その生態はわかっていないことが多い。どこでどんなふうに生まれて、どこを回遊しているのか。生まれたばかりのジンベエザメの子ども(大きさは60cm 前後だという)にさえも、自然界で遭遇した人はまだ誰もいないほど、謎多き生物なのである。
その中でも私がかねてより一番疑問に思っていることがある。それはジンベエザメの歯の役割だ。ジンベエザメの好物はプランクトン。珊瑚や魚介類が産んだ卵や小さな甲殻類を水と一緒に吸引し、網のようになった鰓えらでろ過してから胃に運ぶのだが、かれらがそのようなプランクトンを食べるときに歯を使っているとは、到底思えない。
もし、まったく歯を使っていないのであれば、退化してなくなっているはずだと思うのだが、ジンベエザメの口の中には、上顎・下顎ともにびっしりと生えた米粒大の尖った歯が3000本以上も存在する。
サメは獲物を捕らえるために歯を使うことが一般的だが、もうひとつ、重要な歯の役割がある。サメはオスがメスに噛み付いて身体を固定させてから交尾をするという特徴がある。つまり、サメの歯は、かれらの交尾行動において、オスがメスに噛み付くために使われているのである。
そうするとまたひとつ新しい疑問が生まれる。メスの歯については使い道がないのではないかと。こればっかりはミステリーとしか言いようがないが、好みではないオスに交尾を迫られたときに、反撃して噛み付くためだけに歯が存在していたとしたら面白い。