乳幼児期の口の機能発達:食べる機能、話す機能、呼吸に関する機能の発達について
それでは、口の機能はいつ育つのでしょうか?
乳幼児期(0~6歳頃)に最も大きく育ちます。この時期に口の周りの機能と形態は著しく変化します。
食べる機能の発達:離乳は子どもにとって人生最初の口の機能のトレーニング(学習)
離乳の過程
人間は他の哺乳類の動物と同様に、生後すぐに母乳や哺乳瓶でミルクを飲むことができます。これは哺乳類における反射運動であり、学習せずに乳首から母乳を吸い出して飲み込むことができます。一方、固形の食品を噛みきり、奥歯ですりつぶしながら唾液とともに食塊として飲み込むことは自然にはできるようになりません。最初の前歯が生え始めの時期から始まる「離乳」という学習過程が必要です。そして離乳が完了するのは最初の奥歯が生えて咬み合う1歳半頃になります。その間、子どもは離乳の過程で以下のような順序で食べる機能を学習していきます(表1)。
表1
離乳の過程のつまずきと食べ方や飲み込み方(摂食嚥下機能)や食行動の問題
乳児期において母乳やミルクを飲む運動は、哺乳類特有の反射によって本能的に行われますが、その際に舌は胃腸の蠕動運動(ぜんどううんどう)に類似した動きを示します。
一方、固形の食品を栄養として摂取する機能は、学習によってのみ可能になります。食品を嚙んですりつぶし、唾液を混ぜ合わせて飲み込む行為(咀嚼運動)は、下あごの動き、舌と唇・頰の協調運動です。また、母乳やミルクだけを飲み込んでいた時期から食品を栄養として摂取する離乳の過程で嚥下様式(飲み込み方)も大きく変化します。この咀嚼運動の学習と嚥下様式の移行には、以下の点が大切です。
- (1)乳児期の終わり(12か月頃)頃に上下の乳歯の前歯8本が生え揃い、上あごと下あごの間に舌の先端を差し込んだ状態の飲み込み方(乳児型嚥下)から、上下の歯を噛み合わせて舌を上あごに押しつけた状態で飲み込む(成熟型嚥下)への移行を開始します。
- (2)離乳完了期に当たる1歳6か月頃には、上下の最初の奥歯(第一乳臼歯)が生え終わって、咬み合うことで下あごの位置が安定し、咀嚼運動を開始します。
- (3)この時期には、舌が上あごに密着する成熟型嚥下に移行します。
- (4)この移行期間に適切な性状と固さの離乳食を食べることで、舌や唇、頰の協調と下あごの運きの学習(トレーニング)を行います。
- (5)3歳頃に乳歯が生え揃って、永久歯が生え始める6歳頃までの期間に様々な種類の食品を食べることで固形食品の噛み方が成熟します。
以上の過程で、多数のむし歯や指しゃぶりなどの口の癖、舌小帯(舌の先端のスジ)の異常、偏った食生活等により、摂食嚥下機能の発達が遅れてしまうことがあります。この離乳におけるつまずきも「口腔機能発達不全症」の原因となります。