4月13日は、十三まいり。
春爛漫、桜の名所で名高い嵐山の法輪寺に、古都・京都に住む13歳を迎える若者が立派な大人になるために正装して参詣に行く、美しい行事です。
数え年13歳は、身も心も急激に大人になっていく大切な節目。
不安になりがちなこの時期に、「よくぞここまで成長してくれた」と家族に盛大に祝ってもらうのは、どんなに晴れがましいことでしょう。
十三まいりは「智恵もらい」とも呼ばれ、知恵と福徳を授かるのが参詣の目的です。「帰り道の渡月橋を渡り終えるまでに後ろを振り返ると、お参りの功徳が消えてしまう」という言い伝えもあって、こちらは「誘惑に負けずに意志を貫く人間であれ」という教え。
よく七五三と比較されますが、同じ宮廷発祥の通過儀礼でも、十三まいりは成人式に近いもの。平安時代、清和天皇が13歳になった時に、法輪寺で成人祝いの法会を開いた故事に遡ります。
今の形で京の町の人に広まったのは、江戸時代中期だそうです。
家社会を守るために、あえて自我を持たせずに結婚させる地域が多かった昔の日本で、あえて男の子にも女の子にも賢さと自立心を持つよう教育した、京の都の親たちの深い愛情。関西では七五三より十三まいりが盛んというのも、納得できます。
実は先日、シンガポールで、ご夫婦ともに中華系若手エリートのお宅を訪問した時も、同じことを感じました。
6歳になる男の子の誕生祝いに招かれた、彼の親戚一同と日本人の私たち。
主役のツーレイ君は、ジャズにアレンジした「Happy birthday」が流れる日本製のバースデーカードに夢中になって、何度もパタパタ開いて聴いていたと思ったら、おもむろに赤いサインペンを取り出し、「thank you」と書いて、はにかみながら見せに来てくました。
他の子供たちも人懐っこくて、大人同士の会話の合間に、一生懸命、片言の英語で話しかけてきてくれて、とても楽しいひと時でした。
でも、考えてみたら、就学前の子供たちが英語で短文を書け、片言でも英会話ができるのは、親が熱心に教えているからです。
ツーレイ君の家に間借りしている日本人学校の女の先生の話では、「子供たちに教養とコミュニケーション能力を」という教育方針の下、パパがなかなか厳しいらしい。
シンガポールはアジア有数の大都会。
東京23区ほどの狭い土地に4つの民族が平和に共存するこのシンガポール人家庭の教育の知恵は、京の都の人たちの知恵と、深いところで繋がっています。
コラムニスト 鈴木 百合子
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