青く澄んで、どこまでも続く高い空。こんな空の青を「ソライロ」と呼ぶのは、いつの時代からでしょう。
「秋」は古代の収穫前の儀式を形にした象形文字だそうですが、空気が澄んで過ごしやすいこの時期は、収穫の季節でもあります。
熱いミルクティーが恋しくなるのも、不意に冷えこんでくるこんな時期。味と香りのバランスがよくてコクのあるセカンドフラッシュ(夏に摘んだ紅茶)の茶葉が出まわります。
さまざまな種類のお茶の中から好きなお茶を選んで丁寧に淹れ、みんなで楽しむのが、ティータイムの醍醐味。淹れるのが難しそうなリーフティーでも、コツはたった4点です。
(1)汲みたての水を使う。
(2)ティーポットを温めておく。
(3)茶の分量は正確に量る。
(4)蓋をして3分間蒸らす。
そういえば、11月1日は「紅茶の日」。
幕末にロシア領に漂着した船頭の大黒屋光太夫が、帰国許可を求めて謁見したロシアのエカテリーナ女帝に気に入られ、正式なお茶会に招待されたのが、1791年のこの日なのだそうです。
ヨーロッパの上流階級の紅茶文化は、英国王妃キャサリンのサロンから始まります。
1662年に政略結婚でポルトガルから嫁いだ彼女は、大航海時代の先駆けだった母国の富を背景に、宮廷のサロンで東洋のお茶を優雅にふるまい、招かれた人たちの憧れを一身に集めます。当時のヨーロッパで、黄金と茶葉は同じ価値。王室といえども桁外れの贅沢でした。
その後、サロンでのお茶会は上流社会の社交の場として歴代の女王に引継がれ、英国の国力が大発展したビクトリア女王の時代に、(1)ティーを正しく淹れる、(2)テーブル セッティングは優雅に、(3)ティー フーズは豪華に、というビクトリアン ティールールが確立しました。そして、現代の多様な紅茶の品種は、17世紀から数百年かけて、保存法や嗜好の違いを追求してでき上がったものなのです。
おもしろいことに、英国王妃キャサリンのサロンで飲まれていたのは、現代の緑茶。今でこそ、紅茶が世界のお茶の八割を占めていますが、16世紀には緑茶の方が圧倒的に多かったのです。
1610年頃には、平戸の商館から輸出された茶葉が欧州に着いたという記録がありますから、近年、「日本の玉露がクール」というフランス人が増えたのも、今に始まったことではないのでしょう。
どんなお茶を選んでもいいのです。
暖かい室内や街角のティールームで、丁寧に入れた紅茶をだいじな人と一緒に楽しみたいものですね。
コラムニスト 鈴木 百合子
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