春に芽吹いた樹々の若葉が生き生きと輝いています。
今、エベレスト登頂に挑戦している三浦雄一郎さんや一緒に登っている豪太さんの心象風景は、ちょうどこんな季節なのかもしれません。
8000m級のエベレスト山頂は、体力年齢がプラス70歳になるといわれる過酷な世界。5年前、雄一郎さんが世界最高齢登頂記録を更新したときの山頂からの第一声は「ただいま頂上につきました、ありがとう。涙が出るほど厳しくて、辛くて、嬉しい」でした。
エベレストは、若き日の雄一郎さんが一躍「世界のMIURA」になった特別な山です。1970年に世界最高地スキー滑降に成功し、その記録映画「THE MAN WHO SKIED DOWN EVEREST」はアカデミー賞を受賞。
ちなみに、雄一郎さんがパラシュートを使ってスキーの滑走スピードを調節するのを思いつき、富士山で日本最高地スキー滑降記録を樹立したのは1966年、34歳の頃でした。
折しもその富士山が来月には世界文化遺産に正式決定か、というニュースが重なって、今年の山開き(7月1日)には、にわかクライマーが富士山に殺到 しそうです。でも、登山は危険と隣合わせ。初心者
でも富士山の5合目(標高2305m)まではバスや車で簡単に行けますが、登頂を目指すならガイドツアー がオススメです。
失敗談で恐縮ですが、私も昨年11月の快晴の朝、思い立って車で富士山に向かったところ、4合目あたりで濃霧に巻きこまれました。やっと到着した5合目で は寒風が吹き荒れて霧が流れ、正午の気温が0度。すぐ退散し、4合目の濃霧を抜けた途端、眼下に明るい景色が広がって、1時間後に着いた沼津港はなんと気 温22度。2つの季節を味わえたのは結果的に新鮮でしたが、「天上界」はハイカーが思い立って行く場所ではないと痛感しました。
さて、登山はクライマーにお任せして、必ずしも山頂を目指さないのがトレッキング(山歩き)。これなら富士山の見える楽しいコースがたくさんあります。私の大好きな八ヶ岳南麓もその一つ。
同じような場所を何度も歩いても、咲いている植物がその年ごとに微妙に違ったり、かわいい野鳥の声が聞こえたり、飽きることがありません。見渡す空には夜明けや黄昏の美しさがあり、流れる雲、夜空にまたたく星が無数にあります。
大自然は生きる力の源泉なのでしょう。事前にしっかり準備して、滑落,転倒、道迷いなどの危険を避け、防寒用の上着、登山靴、帽子、地図、コンパス、雨具などを忘れなければ、にわか雨さえドラマティックで楽しいものです。
新緑の季節、皆様もお気に入りの山や素敵なコースでクライミングやトレッキングお楽しみください。
コラムニスト 鈴木 百合子
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