乳歯は生後半年過ぎに下の前歯から生えてきて、お誕生日の頃までに上下切歯4本づつ、3歳までに臼歯を含めて全部で20本生え揃うのが普通です。多少の遅れは気にかける必要はありませんが、1歳を過ぎても生えてこないようなら、歯科を受診なさることを勧めます。
むし歯は、食生活のあり方がかかわる生活習慣病の一つであり、様々な因子がその発生や進行に関与しますが、基本的には細菌による感染症です。したがって、むし歯は子どもにうつるということもできます。
赤ちゃんは無菌状態で産まれてきて、その後ヒトに棲む様々な常在菌に感染し、共生するようになります。むし歯の原因菌も口腔常在菌の一種で、その口腔への定着には歯が充分生えていることが必要であり、乳幼児期の前半に感染するのが一般的と考えられます。そこで、子どもがもっているむし歯病原菌のタイプを周囲の保育者のそれと比較してみますと、母親と一致すること(垂直感染)が最も多いと報告されています。離乳食や幼児食の初期に、スプーンやお箸を共有したり、食物を口移しで与える機会があることによるのかもしれません。
おしゃぶりの長期使用と同様、指しゃぶりを3,4歳を過ぎても続けていると、歯列形態に特異的な変化が認められ、発音にも影響しかねません。上あごの切歯が少し前に出て本来U字型の歯列弓がV字型となったり、上下切歯がかみ合わず隙間ができて開咬となったりします。ただし、4歳頃までに指しゃぶりをやめれば、形態の異常が自然に治ることも報告されています。
歯をぶつけた後、色が変わってくるのは、歯中央の軟組織である歯髄が変性したことをあらわします。ただし、ぶつけた直後と2,3カ月以降におこる変色では意味合いが異なります。ぶつけた直後の淡い変色は、いわば歯髄の内出血と考えてよく、多くの場合自然に消退していきます。これに対して、2,3カ月以降に観察されてくる灰褐色の着色(写真参照)は、歯髄の活性が徐々に失われ歯髄死に至る(失活)兆候を示します。